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年末、年始はマイルス三昧でした(2)

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 先月のこの「角野のひとり言」のコーナーで、マイルス・デイビスの実質リーダーアルバム「サムシン・エルス」(写真)について書きました。私が保有している東芝EMI版に作家の村上龍氏の解説が入っています。名文です。氏はこの解説の中で「私は何百回このアルバムを聞いたことだろう。一冊の本と言われたら答えに困る。一本の映画と言われても難しい。だが一枚のジャズ・レコードと言われたらためらうことなく『サムシン・エルス』をあげるだろう。」と書かれています。

 氏は、高校2年生の時に当時の長崎のAM放送の「ジャズ・コーナー」という番組に投稿した詩が採用され、読まれた思い出について書いています。
「(マイルスのミュート・トランペットの音は)……のためのものではなく、アルジェリアの、孤独で、汚れたテロリストのためのものだから……」という詩であったと。

 私がもともとジャズを聴き始めたのは、大学生の頃に先輩に大阪のとあるジャズ喫茶に連れて行かれたことがきっかけでした。先輩曰く「こうしてコーヒー一杯で1時間、2時間を過ごす。」とのこと。そこから1人で神戸三宮にあったジャズ喫茶に出かけるようになり、友達や当時付き合っていた彼女を連れて行ったりするようになりました。薄暗いジャズ喫茶の中ではJBLの巨大なスピーカーからかなりの大音量でジャズがかかっており、たった一杯のコーヒーで1時間、2時間そこで本を読んで過ごす、というのがジャズ喫茶での流儀でした。

 最近はジャズ喫茶でジャズを聴くということもなくなり、家族のまだおきていない早朝にレコードを聴くのがほとんど。村上龍氏のいう「アルジェリアの、孤独で、汚れたテロリスト」という、本来ジャズが持つダークな、深夜のイメージからはほど遠い時間帯ですが、「何百回」とまではいっていませんが、またこれから何回も「サムシン・エルス」に針を落とし続けることでしょう。

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